資産500万円を突破したのは、2005年から3年ほど経った頃である。大きな達成感があったかというと、そこまでではない。もちろん嬉しくなかったわけではない。ただ、その500万円は、眺めるためのお金ではなかった。家を買うための頭金だったからである。当時は、まだ投資が資産形成の中心ではなかった。月1万円程度の個別株は少しやっていたが、あくまで経験に近い。住宅購入資金を作るうえで主役だったのは、投資ではなく貯蓄である。
妻の給与には手をつけない
やったことは、かなり単純だった。共働きをする。毎月10万円を貯蓄する。ボーナスは基本的に貯蓄へ回す。そのために、妻の給与にはできるだけ手をつけない。生活費は、自分の給与の範囲で収める。それだけである。
書いてしまうと、拍子抜けするくらい普通だが、最初の資産形成では、この普通さが強かったと思う。貯蓄は、余ったらするものではない。余ったら貯めようと思っていると、たいてい余らないことを、自分の金遣い荒さで知っていたから。
収入があれば、支出は自然に広がる。外食が増える。少し良いものを買う。便利な家電が欲しくなる。一つひとつは悪くない。しかし、何も決めていなければ、収入は生活の中に静かに溶けていく。
だから、最初から貯める分を分けた。これは我慢というより、設計である。よくある先取り貯金って、本当に効く。なぜなら、毎月、貯めるかどうかを考えないで済むので痛みもない。そもそも使えるお金の中に入れない。判断を減らすことで、貯蓄が続く形にした。
目的があると、支出の順位が決まる
当時の目的は、住宅購入だった。新築住宅を普通に買えば、大きなローンを抱えることになる。それは避けたかった。家を買うこと自体が目的なのではない。家を買ったあとも、生活に余白を残すことが目的だった。
ここを間違えると、住宅購入は簡単に重荷になる。立派な家を買ったが、毎月の返済に追われる。家はあるが、選択肢が狭くなる。それでは本末転倒である。だから、頭金を用意したかった。借入額を抑えたかった。住宅費を軽くして、その後の資産形成を止めない形にしたかった。
2008年の中古住宅購入につながる
2008年、28歳で築30年の中古住宅を購入した。価格は1,250万円。そこに頭金として500万円を入れた。ローン借入額は750万円である。住宅ローンの返済額は、月3万5千円程度に抑えられた。

この低い固定費は、その後の生活にかなり効いた。家計に余白が残る。貯蓄を続けられる。必要なら繰り上げ返済もできる。実際、その家は5年で完済し、6年後には1,150万円で売却した。中古住宅を選んだことも重要だったが、その前に頭金500万円を用意できていたことが大きい。
最初に必要だったのは計画と先取り貯蓄のみ
資産500万円という数字だけを見ると、人生を変えるほどの金額ではない。仕事を辞められるわけでもない。不安が消えるわけでもない。ただ、まとまった現金があると、選択肢が変わるし、その後の資産形成に回す余力も残せる。つまり、最初の500万円は次の生活設計を軽くするための土台だった。
資産形成というと、どうしても「どう増やすか」に意識が向きやすい。しかし、自分の場合、最初に必要だったのは増やす力ではなかった。ただ、使う前に貯める。目的を決めて、そこから逆算する。この地味な仕組みが、2005年からの3年間を支えていた。
だが、この地味さが、後の住宅購入と低い固定費につながった。最初の500万円は、資産形成の成功体験というより、生活設計の成功体験で、それがその後の資産形成に効いてくる。その仕組みを作れたことが、その後の自由度を決めたのである。
