住宅費は、人生において大きな割合を占める支出の一つです。多くの人が、住宅を人生で最大の買い物と位置付けており、そのため、どのタイミングで、どのような住宅を購入するかは重要な意思決定となります。特に、日本では新築住宅の購入が主流ですが、果たしてそれが最適な選択肢であるかどうかは一考の余地があります。ここでは、私たちが住宅費削減のために最適な戦略を検討し、最終的に中古住宅を購入するに至った経緯を紹介します。
住宅コストの負担と寮生活
まず、住宅費が家計に与える影響について考えてみましょう。住宅費は、月々の支出の中で最も大きな割合を占めることが多く、長期間にわたって家計に大きな負担を与えます。住宅ローンを組む場合、一般的には20年から30年の返済期間が設定されるため、その間、固定費として大きな支出が続くことになります。このため、無理のないローン返済計画を立てることが重要であり、また、将来的に資産価値が下がりにくい物件を選ぶことも大切です。
幸いにも、私たちは会社の福利厚生として提供された寮に、格安で3年間住むことができました。この3年間は、私たちにとって非常に大きな経済的恩恵となり、住宅費を抑えた分、他の生活費や資産形成に資金を回すことができました。寮での生活費は通常の家賃と比べると非常に安く抑えられていたため、貯蓄を大きく増やすことができたのです。この貯蓄が後々の住宅購入をより自由に検討できる土台となりました。
しかし、この寮生活はあくまで一時的なものであり、3年後には新たな住居を探す必要が出てきました。ここで直面したのが、寮で抑えられていた住宅費を、今後もいかにしてコントロールしていくかという課題でした。私たちは、できる限り生活費を抑えつつ、将来的な資産形成にも役立つような住宅選びを目指すことにしました。
新築住宅のリスクと資産価値の低下
多くの人が夢見る新築住宅ですが、その購入には大きなリスクが伴います。新築住宅は、最新の設備や新しい環境という魅力がありますが、経済的には必ずしも最適な選択肢とは言えません。最大のリスクは、新築住宅が「購入した瞬間に価値が下がる」という点です。
新築住宅は、購入時にはプレミアム価格が付いているため、実際に住み始めた瞬間からその価値が急速に下がります。たとえば、数千万円で購入した新築住宅が、1年後には数百万円も価値が下がってしまうことは珍しくありません。これは、自動車が新車で購入されるとすぐに中古車として市場価値が下がるのと似た現象です。新築住宅の購入者は、住宅そのものの価値ではなく、「新しさ」というプレミアムを支払っているため、そのプレミアムが失われると同時に市場価値が減少します。
私たちは、寮生活で得た貯蓄を無駄にしないためにも、このリスクを回避する必要があると感じました。もちろん、新築住宅にはその独特の魅力がありますが、それだけで決断するのは賢明ではありません。むしろ、経済的な合理性を考えた上で、より資産価値が安定している選択肢を探るべきだと考えました。
立地と価格のバランス
次に、住宅の立地についても慎重に検討しました。住宅の価格は、立地条件によって大きく左右されることは言うまでもありません。特に、駅からの距離や周辺施設の充実度が住宅価格に大きく影響します。私たちは、住宅の立地と価格のバランスを考慮し、長期的に無理なく支払える物件を探すことに重点を置きました。
私たちは、駅からの距離と坪単価の関係をグラフ化し、さまざまな条件でシミュレーションを行いました。たとえば、駅から徒歩5分以内の住宅は坪単価が非常に高く、同じ広さでもかなりの価格差が生じることがわかりました。一方で、駅から徒歩15分や20分の物件になると、坪単価が大幅に下がり、同じ予算でも広い敷地や良好な環境を手に入れることができることが確認できました。
下記は一例ですが、中古住宅を購入するために2008年に作ったグラフです。住宅情報サイトから情報を集めてプロットしたもので、地方都市なので、今では都心部では価格は全くの別物となっていると思いますが、当時の土地の価格はこんな感じでした。
さらに、駅から少し距離があっても、日常の生活に支障をきたさない工夫をすることが可能だと気付きました。バスや自転車、さらには電動自転車などを活用することで、多少駅から離れた立地でも、移動の不便さを大幅に緩和できることがわかりました。また、日常生活に必要なスーパーや保育園が徒歩圏内にあるかどうかも、重要な要素となりました。これらの条件を総合的に考慮した結果、私たちは「少し駅から離れていても、生活に不便を感じない物件」を選ぶことにしました。
中古住宅を選ぶ理由
最終的に、私たちは中古住宅を選ぶことに決めました。その理由は、以下の通りです。
まず、中古住宅は新築住宅に比べて価格が大幅に安いという点です。新築住宅は前述の通り、購入直後に市場価値が急激に下がるリスクがありますが、中古住宅はすでに市場で評価された価格がついているため、そのリスクが少ないのが特徴です。特に築10年程度の中古住宅は、建物自体の劣化が少なく、価格も安定しているため、非常に魅力的です。
また、リフォームやリノベーションを行うことで、自分たちの理想に近い住まいにカスタマイズできる点も中古住宅の魅力の一つです。新築住宅では初期費用が高くつき、カスタマイズの余地が少ない場合が多いですが、中古住宅は価格が安いため、その分リフォームに予算を回すことができます。私たちは、購入後に自分たちの好みに合わせてリフォームを行うことで、新築住宅と同等の満足感を得ることができると考えました。
さらに、中古住宅のもう一つの大きな利点は、資産価値が安定していることです。新築住宅は購入後すぐに市場価値が下がりますが、中古住宅はすでに価格が市場で安定しているため、将来的に売却する際にも大きな損失を被るリスクが少なくなります。
ゆくゆくは終の棲家を建てるという長期的な目標を持ちながら、私たちはまず戦略的に希望する地域の中古住宅を探すことにしました。理想の家を新築で建てるのは、確かに魅力的な選択肢です。しかし、現実的な財務計画や将来的な資産形成を考慮する中で、いきなり大きな投資をするのではなく、まずは中古住宅を購入し、今後の市場の動向や土地に対する感覚を掴むことが賢明だと考えました。
希望する地域における中古住宅の購入は、将来のための土地選びや環境への理解を深めるための有効なステップです。中古住宅であれば、購入後のリスクが少なく、価値の変動も比較的予測しやすいため、理想の終の棲家を建てる準備段階として最適だと考えたのです。
中古で買った家の土地が気に入れば建て替えれば良いし、気に入らなければ数年住んで売りに出してしまえばいいのです。新築住宅をかうより、リスクを大幅に削減できるだろうというのが私達の目論見でした。
寮生活での貯蓄を活かした住宅選び
寮生活での3年間、私たちは住宅費を大幅に削減することができ、その結果、まとまった貯蓄を得ることができました。この貯蓄は、住宅購入の際に非常に大きなアドバンテージとなりました。新築住宅を選ばずに、中古住宅を購入することで、貯蓄を無駄にせず、さらにリフォームや生活の質を高めるための資金として有効に活用することが可能となりました。
また、貯蓄があったことで、ローン返済の負担も軽減されました。無理のない返済計画を立てることができ、今後の生活費を抑えつつも、将来的な資産形成を考慮した住宅選びができたことは、非常に大きな成果です。
まとめ
住宅費削減のための戦略として、新築住宅ではなく中古住宅を選ぶことは、非常に有効な選択肢であることがわかりました。新築住宅の価値低下リスクや、立地と価格のバランスを慎重に検討した結果、私たちは中古住宅の購入に至りました。さらに、会社の寮での3年間の生活が経済的な基盤を築き、そのおかげで中古住宅の購入とリフォームに余裕を持って取り組むことができました。
この選択により、私たちは無理のないローン返済計画を立てつつ、資産価値の安定した住宅を手に入れ、将来的な資産形成も視野に入れた生活を送ることができると確信しています。住宅購入は大きな決断ですが、慎重な検討と合理的な戦略をもって臨むことで、より良い未来を築くことができるでしょう。
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