IBITを売却し、約$5,188の損失を確定した。売却額は$7,525、取得費は$12,713である。日本円にすると、為替にもよるが約80万円台の損失である。なかなか良い授業料だった。現在の純金融資産からすると、多少の失敗を「まあ大丈夫」と処理できてしまう。実際、今回の損失も致命傷ではない。生活が壊れるわけでもない。富裕層までの道が完全に閉ざされるわけでもない。だが、問題は損失額そのものではない。問題は、慣れてきて調子に乗って、基準のない投資をしてしまったことだと思っている。今回はその反省と対応を検討した。
IBIT購入と損失の経緯
IBITは、iShares Bitcoin Trustである。ビットコイン価格の動きに概ね連動することを目指すETFである。暗号資産そのものをウォレットで管理するのではなく、証券口座でETFとして買える。同僚との会話で、彼がIBITに手を出したのを知り、自分なりに調べてみようと思った。
今まで勉強のためにと、試験的にポートフォリオの2%程度を金ETFで保持していたのが値上がりして気を良くしていたってのもあるが、何よりIBITの値動きと将来性を語る同僚を見て「とりあえず、夢を買う感じで買ってみるか」って思ってしまったのが失敗だったと思っている。さらに、自分の資産額の1%程度なら、精神的ダメージはないだろう、これは夢枠という思惑だった。当たればラッキー、みたいな。
当然、IBITの原理と、ボラの大きさを把握していたはずだった。でも、リーマンショックとか、コロナショックを株式で乗り越えてきたのでなんとかなるだろう。将来的には価値が上がるだろうから、これくらいなら持ち続ければいいかな、なんて感じで、買った金額は、合計で$12,714。売却額は$7,525。結果として、$5,188の損失を確定した。
単発で一気に買って、一気に負けたわけではない。取得日は2025年1月31日から2025年12月30日まで広がっている。保有日数も、短いものでは55日、長いものでは388日ある。つまり、2025年の間に何度も買い、2026年2月23日にまとめて売却した形である。

今回の失敗は「一度の判断ミス」というより、「基準が曖昧なまま買い増していった結果」だろう。最初は小さく買った。その後も、少しずつ買った。途中でまとまった数量も買った。そして、下がった後に売れず、最終的にまとめて損切りした。IBITを何の役割で持つのかが曖昧なまま定期購入を続けたのが問題だったと思っている。このあたりが曖昧なまま、購入だけが積み重なっていたので、損失を出した時に信念の弱さが露呈した。
なんでこうなった?
今回の問題は、想定外のリスクを取ったことではない。投資をしている以上、想定外のことは起きる。株価は下がる。為替も動く。債券も下がる。全世界株式を持っていても、短期的には普通に大きく下がる。それ自体は問題ではない。富裕層を目指すなら、ある程度のリスクは必要だし、それを自覚した投資をしているつもりだ。
私の投資方針は、かなり単純である。
『私達を取り巻くいろんな問題は、困難で複雑。だけど、なんやかんやあっても長期的には「明日は今日よりいい明日になる!」って全世界中の人が知恵出して、努力して、解決策を考えて、希望を持ち、実現する、ということに賭ける』。
だから、全世界株式を買うし、短期的に下がっても、基本的には売らない。これは単なる商品選択ではない。自分がどの未来に賭けているのか、という話である。一方で、IBITはそのナラティブ(私は、Narrativeという言葉を、客観的な事実をつなげ合わせたストーリーではなく、人生経験から強烈に信じている物語という意味で使っている)にうまく接続していなかった。
ビットコインには、ビットコインのストーリーがある。
「国家通貨への不信。供給量が決まっている、希少性。分散性。インフレヘッジ。既存金融システムへのオルタナティブ。デジタルゴールド。」これは、ビットコインが将来上がることが期待できる客観的なストーリーだ。しかし、それはあくまで客観事実をつなげたストーリーだ。AIに「ビットコインは将来上がる理由」を聞けば教えてくれる。
これは弱い。投資対象が下がったとき、最後に残るのは利回りの計算ではなく、自分がその投資を信じる理由である。自分の投資方針に合っていないものを、雰囲気で買ったこと。その結果、下落時に保有理由を失ったこと。これが今回の失敗であると分析している。
ボラが大きいと、ナラティブの弱さが露呈する
ボラティリティが大きい資産が悪いわけではない。大きなリターンを得ようとすれば、大きな値動きは避けられない。富裕層を目指している以上、リスクを取り、価格変動そのものから逃げることはできない。問題は、ボラティリティに耐えるためのナラティブが自分の中にあったかどうかである。
実際、私がメインで保有している全世界株式にも何度も暴落イベントはあった。
関税ショック、コロナショック。インフレと金利上昇による株価下落。戦争や地政学リスク。為替変動。金融システムへの不信。こうしたイベントが起きれば、全世界株式でも普通に大きく下がる。過去データでは、MSCI ACWIは2000年以降の長い下落局面で最大50%超のドローダウンを経験している。そんなことはもちろん知っている。だから、私が全世界株式を持っているのは、暴落しないと思っているからではない。
強いナラティブがある資産なら、値動きはある程度受け止められる。むしろ、評価額が低下した際には毎回、買い増ししている。
逆に、弱いナラティブしかない資産なら、値動きに振り回される。今回のIBITはこれだった。
教訓
今回の教訓は、「ビットコインを買うな」ではない。また、「ボラティリティの大きい資産を持つな」でもない。教訓は、自分ナラティブに沿わないリスクを取ると、下落時に耐えられない、ということである。投資対象を買う前に、自分の想いや信念を確認する必要がある。
その資産は、自分の未来観に合致するか。下がったとき、なぜ持ち続けられるのか。買い増す理由はあるのか。他人が買っていなくても、自分は買うのか。
答えられないなら、私は買えない。富裕層を目指すには、リスクを取る必要がある。ただし、そのリスクは、自分のナラティブとつながっていなければならない。私の場合、それは「明日は今日よりいい明日になる」という方向に賭けることである。世界中の人が知恵を出し、努力し、問題を解決しようとする。その積み重ねに資本を置く。このナラティブに乗っている投資なら、多少下がってもまだ耐えられる。
ある程度自分の握力に自信はあった。投資を始めてから「全世界株式」を売ったことはない(海外居住に伴う旧NISA口座か特定口座への付け替え(今思い出してもイライラする)はあったが)。それが、自分の投資方針から外れたものを買うと、こんなにもあっさり握力がなくなると分かったことである。少額の損失でも、とにかく弱い。IBITは、その確認になった。
ビットコインも、魅力的な資産である。今後、自分のナラティブと結びつつけることができれば、リスクを加味したうえで購入を検討することはあると思うが、次に色気が出たときは、価格ではなく、ナラティブを見る。それは、自分が長期で賭けたい未来なのか。違うなら、買わない。今回の失禁売却は、そのための記録である。
まとめ
今回の失禁売却の教訓は、リスクの大きさよりも、保有理由の弱さである。自分の投資方針に接続していない資産は、下落したときに握れない。私には、全世界株式は暴落しても、長期で賭けているナラティブがある。IBITには、それが足りなかった。次に色気が出たときは、上がるかどうかではなく、下がっても持てる理由があるかを見る必要があると痛感。
投資方針:『私達を取り巻くいろんな問題は、困難で複雑。だけど、なんやかんやあっても長期的には「明日は今日よりいい明日になる!」って全世界中の人が知恵出して、努力して、解決策を考えて、希望を持ち、実現する、ということに賭ける』。
※本記事は筆者個人の経験や考え方をまとめたものであり、特定の金融商品や投資方法の購入・売却を推奨するものではありません。投資には元本割れを含むリスクがあります。実際の投資判断は、ご自身の責任において行ってください。
