純金融資産が100万円を超えたのは、たしか社会人になって3年半くらいだったと思う。年齢でいうと26歳頃だっただろう。その当時を思い出しながら、どのように達成したのか、到達時に何を感じたのかを振り返ってみる。通帳(今は全部オンラインだが、当時は「銀行通帳」に記帳していた)の数字を見て、妻と喜んだことは覚えている。切りの良い数字には、実態以上の力がある。
毎月3万円とボーナスで積み上げた
当時の貯蓄ペースは、毎月3万円程度だ。王道の先取り貯金で、貯蓄口座に振り込む。その先取り分はなかったものとして生活する。「余ったら貯めよう」では絶対に貯まらない、と確か祖父(だったか、母親だったか、今となっては定かではない)に教わり、それを続けた。
毎月3万円を12か月続ければ、年間36万円である。そこにボーナスを加えることで、ようやく100万円に届いた。当時の給与明細を見てみると、残業を30時間ほどして、手取りで20万ほどなので、そこそこ恵まれていたと思う。就職氷河期を乗り越えて、さらに転職してやっと手にした安月給では、それが精一杯だった。

就職してからすぐにお金が貯まったわけではない。
就職して1年半、婚約指輪を買った。結婚の準備をした。新生活を整えた。さらに、転職した地方ではクルマが必須だった。ありがたいことに、先輩から5万円の中古車を譲ってもらった記憶がある。5万円の車というと、今思えばなかなかの響きである(笑)。そんな感じで、貧乏で、何者でもなくて、何も持っていなくて、若さだけがあって、で、妻とこれからの暮らしを考えて貯めなければ、という感じだった。
26歳の100万円の位置づけ
26歳で純金融資産100万円。J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査2025年」で見ると、20代の金融資産中央値は、二人以上世帯で125万円、単身世帯で37万円とされている。つまり、100万円は突出して多い金額ではない。
ただ、まったく貯められていない側でもない。当時は結婚前後の支出もあった。婚約指輪を買い、結婚し、新生活を整え、クルマも必要だった。そのなかで、それでも手元に100万円を残せた。そう考えると、自分たちにとっては十分に意味のある金額だった。資産家の金額ではない。しかし、会社員として働き、生活費を払い、そのうえで金融資産を作れたという意味では、小さな成功体験だった。
コツコツやれば貯まるという実感
100万円に到達して感じたのは、資産形成には一定の再現性があるということだった。収入の一部を先に残す。ボーナスを使い切らない。大きな支出の後でも、また積み上げる。
これを繰り返せば、少なくとも現金は増える。極端な節約をした記憶はないが、毎月3万円を残すという単純な行動には、それなりの力があった。月3万円は、1日あたり約1,000円である。
昼食、コンビニ、飲み会、服、家電、旅行。こうした支出を少しずつ調整すれば、何とか捻出できる金額ではあった。大変だったが、「簡単ではないが、不可能でもない」という感覚が、最初の100万円で得られた最大の収穫だった。
達成した時に、「ついに大台に乗った!」という成功体験を得られるとともに、モチベーションが上がった。
しかし、家は買えなそうだった
一方で、100万円に到達した瞬間に、別の感覚もあった。これを繰り返しても、家は買えなそうである。私たち夫婦の当時の目標は、家がほしい、だった。しかし、毎月3万円を貯めても、年間36万円である。ボーナスを全額入れても、年間で100万円前後が現実的なラインだった。仮に5年続けても500万円である。もちろん、500万円は大きい。しかし、住宅購入を考えると、急に心もとなくなる。
頭金、諸費用、家具家電、引っ越し費用、予備資金。家を買うという行為は、物件価格だけでは終わらない。生活の土台そのものを移動させるため、想像以上に現金を吸収する。
20代としては悪くない100万円。しかし、家を買う資金としては、まったく足りない100万円。この落差が、当時の100万円の正体だったと思う。
資産形成の出発点としての100万円
純金融資産100万円は、成功体験だった。明らかに希望だった。コツコツやれば貯まる。給料の一部を残し、ボーナスを守れば、資産は増える。これは間違いない。そして、切りの良い数字を夫婦で喜べること自体も、悪くなかった。
支出を収入より小さくすれば、お金は残る。ボーナスを使い切らなければ、資産形成は加速する。夫婦で目標を共有すれば、貯蓄の意味が明確になる。
これらを考えると、単に現金を積み上げるだけでは足りない。収入を増やすこと、支出構造を整えること、そしてどこかで投資を取り入れることが必要になる。最初の100万円は、その入口だった。
まとめ
純金融資産100万円に到達したとき、素直にうれしかった。就職して3年目。毎月3万円を残し、ボーナスを貯め、結婚に関する支出を乗り越えながら、ようやく到達した金額である。
まだ未熟な駆け出し夫婦にとって、「自分たちにも貯められる」という成功体験だった。一方で、「このペースだけでは家は買えなそうだ」という現実もあった。小さな達成で前に進みながら、その達成だけでは足りない現実を知る。そして、足りないとわかったところから、次の設計が始まる。
最初の100万円は小さい。だが、自分たちが手にした最初の資産だった。
