【退職まで3,605日】
注文住宅を建てるとき、私が一番避けたかったのは、家にお金をかけすぎて、その後の資産形成が止まることだった。もちろん、家は大事である。家族が長く暮らす場所であり、快適性も必要になる。けれど、理想を全部積み上げていくと、住宅費は簡単に膨らんでいく。
実際、大手住宅メーカーで提示された見積もりは4,000万円だった。一方で、私たちが考えていた予算は2,500万円である。この差をそのまま受け入れていたら、その後の家計はかなり重くなっていたと思う。そこで発想を切り替え、大手メーカーではなく地元の工務店に相談することにした。その結果、ガレージや外構を含めて総額2,500万円程度に収めることができた。
ここでは、限られた予算の中で注文住宅を実現するために取った戦略と、実際にこだわったポイントを整理する。なお、土地を取得したのは2014年、建築は2015年である。現在は資材費や人件費の上昇により同条件での建築は難しくなっている可能性があるが、考え方自体は今でも有効である。
この記事では、注文住宅を建てた経験を、住宅そのものの話ではなく、資産形成を止めないために住宅費をどう抑えたかという視点で振り返る。
土地購入までの経緯についてはこちら。

注文住宅を考えたきっかけ
注文住宅を建てることを決めたきっかけは、第一子の成長と第二子の誕生である。家族が増えることで必要なスペースや生活動線を見直す必要が生まれ、住環境そのものを改めて考えるタイミングとなった。その結果、新築に踏み切る判断に至った。
すでに築30年の中古住宅を所有していたため、「どこにお金をかけるべきか」「どこは割り切れるか」といった価値観は夫婦の中である程度整理されていた。実際に住んでみた経験があったことで、生活に必要な要素と不要な要素の判断が具体的になっていた。
間取りについても同様である。中古住宅での生活を通じて理想の形が明確になっていたため、それをベースに無料の間取り作成ソフトを使い、自分たちでプランを作成した。

これをベースに、自分たちの希望に寄り添い、かつそれを上回る提案をしてくれるハウスメーカーを探すことにした。
住宅展示場で大手メーカーを回るも撃沈
理想の間取りを具体化し、それを持って大手ハウスメーカーの展示場を回った。モデルハウスはどこも広く、設備も豪華で、一見すると魅力的に見える。営業担当も積極的に声をかけてくる。
土地をすでに保有していることを伝えると、「プランを作る」と言われる。そこで自作した間取りを提示したが、反応は鈍かった。理由は明確で、彼らは既存のパターンから近いものを提案することはできても、こちらの間取りをベースにブラッシュアップする力がなかった。
さらに、断熱性能についても納得できる説明は得られなかった。当時は各社とも断熱仕様に大きな差がなく、こちらの質問に対しても曖昧な回答が多かった。無垢材の床を勧められるなど、興味のない提案ばかりが続いた。
住宅展示場に行くと、まず年収を聞かれる。そして「このくらいなら問題なく返せる」と言われる。提示された見積もりは4,000万円。予算2,500万円との乖離は大きかった。
商品券やギフト、子ども向けのおもちゃなどの販促も多いが、そのコストは最終的に価格に反映されている。テレビCMなどの広告費も含め、大手メーカーの価格帯は自分たちの前提と合わなかった。
この時点で、大手メーカーで理想の家を実現するのは難しいと判断した。実際に家を建ててみて感じたのは、「どのメーカーで建てたか」は本質ではないということだった。重要なのは、自分たちの考えを理解し、具体的な形にできるパートナーかどうかである。
地元のハウスメーカーとの出会い
視点を変え、地元の工務店に相談した。すると、大手と比べて圧倒的に柔軟であり、こちらの要望を前提に話を組み立ててくれることがわかった。対話が成立する感覚があった。
注文住宅のこだわりポイント
断熱性能の向上
住宅の快適性を左右するのは断熱性能である。日本の住宅は断熱が弱いケースが多く、地域によっては快適性に大きな差が出る。
採用した仕様は以下である。
スタイロフォームとウレタンフォームの併用
窓はペアガラス+樹脂サッシ
現在では一般的になりつつあるが、当時は関東圏ではまだ珍しい仕様だった。これにより、冷暖房効率を高めつつ、年間を通して安定した室内環境を実現した。
基礎断熱も提案されたが、シロアリリスクを考慮し、床断熱を選択した。知識を持って打ち合わせに臨み、それを受け止めてくれるパートナーだったことは大きい。
間取りの工夫
築30年の中古住宅での経験を踏まえ、生活に直結する要素を優先した。
家事動線を最優先とし、回遊動線を採用
家族構成の変化に対応できる可変間取り
パントリーやウォークインクローゼットなど十分な収納
室内干しスペースの確保
書斎の設置(後にリモートワークで有効に機能)
寝室+子供部屋2部屋+屋根裏スペース
トイレと洗面台は2箇所
日常のストレスを減らすことを最優先に設計した。
外構の工夫
土地の広さを活かしつつ、外構は別途手配とした。ハウスメーカー経由ではなく直接業者に依頼する方がコストを抑えられるためである。
ビルトインではなく独立型ガレージ
カーポート設置(霜対策)
庭は最低限とし、砂利+防草シートまたはコンクリートで管理負担を軽減
見た目よりも維持コストと実用性を優先した。
コストを抑える工夫
最終的な費用は、建物本体で約2,000万円、外構で約500万円、諸費用で2,560万円となった。
ポイントは、こだわる部分と削る部分を明確に分けたことである。すべてにお金をかけるのではなく、優先順位を徹底的に整理した。その結果、必要な性能と機能を確保しながら、予算内に収めることができた。

私たちがこだわらなかったもの
コストを抑えるために、あえてこだわらなかった領域も明確にした。
ユニットバス、洗面台、トイレは標準仕様で十分と判断した。
床材や壁紙も基本は標準仕様とし、リビングのみ少しグレードを上げた。
吹き抜けは空間効率が悪いため採用しない。
建物形状はシンプルな長方形とし、複雑な設計は避けた。
キッチンも標準仕様で問題なしと判断した。
地元の工務店であれば、このような「上乗せコスト」が小さいため、全体として価格を抑えやすい。
予算の設定と資金計画
中古住宅を売却し、すでに土地を取得していたため、建築費はおおよそ2,000万円程度と考えていた。しかし実際に見積もりを進めると、外構・諸費用込みで約560万円オーバーした。
住宅ローンは30年で設定し、月々の返済を抑えつつ、同時に資産形成を進める方針とした。
当時は住宅ローン控除が1%で、金利よりも控除のメリットが上回る状況だった。そのため、控除期間である10年間は繰り上げ返済をせず、その後に一括返済する前提で設計した。
中古住宅では、実質的に住居費ゼロに近い状態を実現していた。加えて、結婚後は夫婦で毎月10万円を貯蓄し、さらに「家賃を払ったつもり」で毎月6万円を追加で積み立てていたので、新築時には約1,000万円の手元資金があったので、そこから頭金200万円を出し、借入2,360万円とした。
金利は変動と固定を半分ずつ組み合わせ、月々の返済額は約8万円。その後、5年後に600万円の繰り上げ返済を実施し、現在の返済額は約5万円まで低下している。
返済期間は維持したまま月額負担を下げることで、家計のキャッシュフローを改善し、その分を投資に回す設計とした。この戦略により、入金力が高まり、その後の資産形成に大きく寄与することになる。
ここで意識していたのは、家を買って終わりにしないことだった。住宅ローンを組んだあとも、教育費はかかるし、老後資金も必要になる。さらに、富裕層を目指すのであれば、投資に回すお金も残しておきたい。
だから、住宅ローンの返済額を家計の中心に置きすぎないことを重視した。家は満足できるものにする。ただし、家計を家に支配させない。このバランスが、後の資産形成にはかなり効いたと思う。
予算内で理想を実現するためのポイント
注文住宅を予算内で実現するためには、いくつかの要点がある。
工務店選び
大手だけでなく地元の工務店も含めて比較する。
施工実績や評判を確認し、信頼できるパートナーを選ぶ。
設計者との相性を見極め、要望を具体化できるかを確認する。
コストの最適化
標準仕様をベースにし、不要なアップグレードを避ける。
直線的な設計で施工コストを抑える。
外構や設備費用も初期段階から織り込む。
資産形成とのバランス
頭金を抑え、手元資金を確保する。
住宅ローン控除や各種制度を活用する。
余剰資金は投資に回し、長期的な資産形成を意識する。
まとめ
振り返ると、注文住宅を建てるうえで一番大事だったのは、理想の家を建てることだけではなかった。理想を叶えながらも、住宅費を膨らませすぎないこと。家族が快適に暮らせることと、将来の資産形成を両立させること。そのバランスを取ることだった。
4,000万円の見積もりをそのまま受け入れていたら、たしかに別の家が建っていたかもしれない。でも、その後の入金力はかなり落ちていたと思う。住宅は、家族の生活を支える場所であると同時に、家計に長く影響し続ける固定費でもある。だからこそ、満足できる家を、背伸びしすぎない金額で建てられたことは、資産形成においても大きな意味があった。
